MACS System術式|キャップ式磁性アタッチメント(MACS)

2012年医歯薬出版出版 書籍「インプラントオーバーデンチャーの基本と臨床」より

図1.78歳,女性.高度な骨吸収のため,義歯不安定および義歯疼痛を主訴で来院.外科的侵襲や経済性から2本のみのインプラント植立を計画

図2.臼歯部の骨量がないため2|2に植立してType R使用(ソフト・デザイン)の設計とした.磁性アタッチメントは植立位置や方向の制約が少ないため,施術は比較的容易である

図3.あらかじめマグネットにレジンキャップを付与しておくことを推奨している.各種インプラント対応MACS System(http://www.macssystem.jp)

図4.約3ヵ月の免荷期間経過後,最終補綴を製作する.キーパーを接続した状態.なお、3|3でなく2|2にインプラントを植立することで,前方での咬合で前後的義歯の転覆を防ぐことができる.

図5.レジンキャップ付マグネットのレジンキャップ辺縁を周囲歯肉に合うように調整したのち,キーパーに吸着させる.確実に吸着できているか確認後,この状態で義歯の印象採得を行い,義歯を製作していく.

図6.義歯粘膜面凹部に即時重合レジンを少量のみ盛り,口腔内に適合させる.この操作は義歯とレジンキャップ付マグネットの位置決めのためのみなので,遁路をあける必要はない.なお,即時重合レジンのスペースを確実に確保するため,凹部を1層削ってから行う.

図7.レジンキャップにより,アンダーカットへの即時重合レジンの流れ込みを防止できるため,確実に硬化するまで待つことができる.未重合で外すとマグネットの浮き上がりの原因となるので十分注意する.

図8.硬化後,義歯を外してレジンキャップ辺縁と義歯粘膜凹部との多少の隙間の修正により,容易に完成される

図9.維持安定もよく,咀嚼障害の回復ができた.清掃性や取り扱いにも優れ,経過も良好

図10.パノラマエックス線写真.高度な骨吸収が認められるが,インプラント・マグネットデンチャーにより「機能回復」と「支台および顎堤保全」の調和のとれた設計ができたと考えられる

2012年QDI Vol,19(1)「今なぜ、磁性アタッチメントの有用性を再考すべきか-長寿社会を迎えて-」

図1.患者は70歳,女性.臼歯部においては,上顎洞底が下がっており,前歯部4本インプラントを利用した設計を計画.咬合支持は臼歯部粘膜で受け,磁性アタッチメントは単に開口時における義歯の浮き上がりを防止するためで「支台の保全」を重視した設計となる.

図2.長期義歯を使用している症例では骨量が少なく,理想的な位置や方向に埋入することが難しいことが多いが,そのような際にも埋入方向や位置に制約の少ないマグネットは有利である.

図3.IODでもっとも注意することに免荷期間中の扱いがあり,ガーゼ法を推奨している.負荷がかからないように義歯の内面を大きく削合し,弾性裏装材を使用する際,ガーゼを置いたうえで行う.ガーゼにより弾性裏装材が剥離部に迷入するのを防止するとともに,硬化後外すことでリリーフを簡単にできる.

図4,5,6磁性アタッチメントはあらかじめマグネットにレジンキャップを付与したMACS System (www.macssystem.jp)を著者は使用している.これにより取り付けにおけるマグネットの位置ズレやアンダーカットへの即時重合レジンの流れ込みを防止できる.キーパーを取り付けたのち(e),確実に吸着できるようにレジン辺縁を調整したレジンキャップ付マグネットをキーパーに吸着させる(f).この状態で義歯の印象採得を行い義歯を製作する.その後,マグネット取り付けのための即時重合レジンスペースを確実に取るため,義歯の内面凹部を一層削る.

図7,8,9.レジンキャップ付マグネットの取り付けには垂直的緩衝やマグネットの付け直しを考えて弾性材料(ソフリライナー:トクヤマデンタル)を使用する方法も推奨される.
即時重合レジンを使用する際には,即時重合レジンを少量のみ使用してレジンキャップ付マグネットをピックアップし,その後,辺縁を修正する方法を用いることで遁路を作る必要もなくなる.無口蓋であるが,維持安定も良く経過良好である.

天然歯用 MACS System《チェアーサイド操作マニュアル》

技工所にて作製したレジンキャップ付マグネットを使用する方法

技工所よりレジンキャップ付マグネットとキーパー可撤式根面板が納品。

①キーパー可撤式根面板を合着。レジンキャップ付マグネットが確実に吸着するか確認します。

②レジンキャップ付マグネットを吸着させた状態で義歯の印象採得をします。

③作製された義歯の内面凹部に、即時重合レジンを盛り、レジンキャップ付マグネットが吸着してある口腔内に戻します。なお、この操作はレジンキャップと義歯内面凹部の位置決めのためなので即時重合レジンは少量のみでよく、遁路をあける必要はありません。

④即時重合レジンが硬化後、義歯を外すことによりレジンキャップ付マグネットは義歯に取り付けられます。

⑤レジンキャップと義歯内面凹みとのわずかな隙間を即時重合レジンにて修正することによってマグネット義歯は容易に完成されます。

マグネット取り付けにおけるポイント

※義歯においては、即時重合レジンの入るスペースを確実にとるために、義歯内面凹みをあらかじめ一層削ります。取り付け前に、吸着されているレジンキャップ付マグネットと義歯内面凹みとが接していないかフィットチェッカー等で確認して下さい。(尚、スペース確保を簡便にできるリリーフキャップ法もあります。詳しくは技工所㈱杏友会TEL 03-3334-2621または、歯科技工 第30巻第 6号 P716~721「磁性アタッチメントで変わるパーシャルデンチャーの設計概念・製作」参照)

※マグネット取り付けは、義歯内面全体が口腔粘膜に均等にあたるように指で軽く押さえた状態で即時重合レジンが完全硬化するまで待ちます(約5分程度)。未重合で外すとマグネットの浮き上がりの原因になりますのでご注意下さい。また、取り付け時の即時重合レジンの量は少なめにし、隙間の修正には細い筆(パイル筆 No.3 松風 etc)の使用をお勧めします。尚、取り付けは義歯装着後数日使用して、義歯床が十分口腔粘膜に馴染んでから行うことをお勧めします。