○田中譲治， 星野和正， 水谷 紘*
日本インプラント臨床研究会， ＭＡＣＳ研究会
*東京医科歯科大学歯学部歯科補綴学第１講座
要旨
磁気エネルギーという特殊な維持力をもつマグネットは，従来の機械的維持装置にない様々な特性を持ち，優れた維持装置として注目を集めている。しかし，マグネットの取り付けの際の不手際により，マグネットの位置ずれや使用中のマグネットの脱落を生じさせることがある。さらに磁気共鳴画像（MRI）に及ぼす悪影響，鋳接や酸処理によるキーパーの劣化など幾つかの問題点が残されている。そこで，これらを解決するとともに利点と応用範囲を広げたキャップ式磁性アタッチメント（MACS）を開発しているので，ここではインプラントに応用した症例を中心に報告する。
MACSとは，維持歯（天然歯及びインプラント）に固定される雄部と，補綴物に固定される雌部からなる磁力による維持装置である。雄部においては，維持歯に固定する為の部分（通常ネジ）と雌部を吸着するための頭部を有しており，雌部においては，雄部を覆うようにするキャップ部を有することを特徴としている。MACSをインプラントに応用する事によりオーバーデンチャーにおいては容易に理想的かつ確実にマグネットをインプラントに応用する事ができるともに，簡便に後日の設計変更ができる。可撤式クラウンブリッジへの応用においては容易に作製できるだけでなく，スクリューの緩み，パッシブフィットした上部構造の作製の困難さ，審美性を欠くアクセスホールなどの現在のスクリュー止めによる様々な問題点を解決できる。さらに，印象採得への応用においては，容易に精密な印象採得が出来るだけでなく，開口量が少ない場合や臼歯部等でスクリューのアクセスが困難な部位にも適応でき，オープントレー法の問題点である煩雑さなどを解決できる。
参考文献
１田中貴信：磁性アタッチメント；第1版，医師薬出版，東京、１８－３９，５９－７０，８６－１２１，１９９２．
２藍 稔，水谷 紘，石幡伸雄，中村和夫：磁性アタッチメントを用いた部分床義歯，クインテッセンス出版，東京、１８－４２，１９９４．
３石上友彦，栗田賢一，内藤宗考，大崎千秋，田中貴信：磁性アタッチメントを利用したインプラント義歯，歯科ジャーナル，３８（１），４９－５５，１９９３．
４田中貴信：続・磁性アタッチメント；第1版，医師薬出版，東京、１６，２２－２７，１９９５．
５田中譲治，鳥居秀平，柏原 毅，塩路昌吾，相浦洲吉，小澤幸重：インプラントにおける磁性アタッチメントの応用，日口腔インプラント誌，８（２），１６２－１６８，１９９５．
６田中譲治：キャップ式磁性アタッチメントの応用，ザ・クインテッセンス，１５(5)，１５７－１６６，１９９６．
７ 田中譲治：キャップ式磁性アタッチメント －インプラントにおける臨床応用と展望に関する一考察 － ：Quitessence DENTAL Implantology，３(５)，７１－８２，１９９６．
